行政書士試験の基礎法学

行政書士試験において、基礎法学は第1〜2問までの2問、計8点の出題となっています。

基礎法学、という名称になっていますが、どこがどう基礎なのかはよく分かりません。
法学に通用的なこと、という程度の意味かも知れませんが、出題内容を見る限り、どうやら出題者にも意味が分かってないようです。
こちらとしては余計に意味が分からないので、なにをどうすればいいのやら、といった感じです。

のっけから皮肉っぽい文章ですいません。
ですが、この2問は……

法律系資格試験では、第1問に訳の分からん問題を出して、いきなり受験生のやる気を削ぎに来る、という、サッカーでいうところの削り? なに、いきなり削りに来てんの? みたいなことをかましてくれる、というのは結構ありがちだったりします。
記念受験の方々を廃除するのがその目的か、と。
それとも圧迫面接か?
ある意味、基礎法学はまさに削りプレイなので、ムキにならず相手にしない、という大人な態度が要求されています。

具体的な出題内容

とりあえず、「これが一番難しいんじゃない?」という問題を見てみましょう。

裁判外の紛争処理手続の種類に関する次の文章の空欄A〜D内に当てはまる語として、正しいものの組み合わせはどれか。

紛争当事者は、話し合いにより互いに譲り合って紛争を解決することができる。しかし当事者間で話し合いがつかないときは、権威ある第三者にはいってもらって、紛争を解決するほかない。国家はそのために、正式な裁判のほかにも種々の制度を用意しているが、その一つが裁判上の「 A 」である。また「当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする」紛争解決方法として、わが国では「 B 」が発達し、争いの性質によっては訴訟よりも活用されてきた。たとえば家事審判法によれば「 B 」を行うことのできる事件についてはいきなり訴訟を提起することはできず、まずは「 B 」の申立をしなければならない。裁判によらない紛争解決の方法としては、さらに「 C 」がある。これは紛争当事者が争いの解決のために第三者を選び、その判断に服することを約束することによって争いを解決する手段であり、特に商人間の紛争解決手法として古くから発達してきた。近時はこのような裁判外の紛争処理方法を「 D 」として捉えて、その機能を強化することへの期待が高まっており、関係する制度の整備が行われている。

1, (A)和解   (B)調停   (C)仲裁   (D)PFI
2, (A)示談   (B)仲裁   (C)あっせん (D)ADR
3, (A)和解   (B)調停   (C)仲裁   (D)ADR
4, (A)調停   (B)仲裁   (C)あっせん (D)PFI
5, (A)示談   (B)あっせん (C)裁定   (D)PSE

(平成18年第1問)

正直、そんなん知らんがな……
まあ、「 A 」は「裁判上の」と来たら「和解」しかない、というのは民事訴訟法を知っていればできます。
うん。民事訴訟法は行政書士試験の試験範囲ではないけど、ね。
「 B 」も民事訴訟法の知識があれば、「調停」と分かります。
「 C 」もやはり民事訴訟法の知識で「仲裁」と分かります。
まあ、そこまでは良いとしようじゃないか。良くないけど。法学部学生でも民事訴訟法は普通あんまり勉強してないものだけど。
まあいいとする。
問題は「 D 」、お前だ。お前なんだ。

この時点で答えは1or3。
なので「 D 」はPFIか、それともADRか……
……どっちとも聞いたことねぇよ orz
誰だよお前。誰なんだよお前は一体。
どの本のどこを読めばお前の正体書いてあるのかさえ、全く見当が付かねぇよ。

んー、手がかりがねぇ。
「 D 」の選択肢を1〜5まで眺め回してみても分からん。
P……プレか、preなのか? プレ……Fってなんだよ……

と、まあこんな感じです。
ちなみに答えはADRで3が正解。Alternative Dispute Resolution。
ADRについて記述されている本は、知ってる範囲では民事訴訟法の専門書(学生向けの教科書ではない)くらいです。まあ不勉強なだけかも知れませんけれど。
出題背景としては、平成16年に、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(略称ADR法)が公布、平成19年に施行されたことが挙げられます。
……とググったらwikipediaにそう書いてあった。
知らんがな。出題は平成18年だろがよ。施行前に出すなやボケ。
参考までにPFIは広義の民営化の一手法。PSEは電気製品の安全マーク。
知らんがな。お前ら全員知らんがな。
つかオマエ、選択肢自体ムチャクチャじゃね? 分かるわけねぇこと前提にしてね?

はっ! イライラしてしまった!
削られてるよ、ハートが削られてるよ!
いかんいかん、落ち着け。落ち着くんだ自分。

と、まあそんな感じ。

もっとも、過去問の半分くらいは簡単な問題です。

次のうち、誤っているものはどれか。

1,法令の公布は、慣行として官報によることとされている。
2,法令は、公布され、かつ施行される日から国民に対する効力を生じうる。
3,法令は、その附則において施行期日について規定していることが通例である。
4,法令が公布の日から施行されるということはない。
5,法律または条例に規定された罰則が、施行期日前の事実につき行為者に不利に適用されることはない。

(平成15年第1問)

これは簡単な問題。答えは4。
公布と施行について理解していれば解けます。

勉強方法

基本的には過去問を見ておく、ぐらいしかなさそうです。

簡単な部類に入る出題としては、
・法律の公布と施行
・法律の効力(特別法は一般法より優位、後法は前法を破る、など)
・近代私法の原則、罪刑法定主義などの原則
・法解釈における一般原則
・法令用語

などが挙げられます。

これらの部類の問題は、早稲田セミナーSucess過去問集1憲法・基礎法学であれば、解説できちんとまとめられています。
知識としての分量は少ないので、しっかり暗記しておく必要があるでしょう。
このタイプの問題は落とさないことです。

難しい部類の問題としては、
・民事訴訟法、国籍法など範囲外科目からの出題
・最新法令からの出題
・マイナー科目の法諺(法的格言)

このあたりになるでしょうか。

このあたりも、時間を掛ければ事前に準備できないわけではないのですが、膨大な時間が掛かりますし、それだけ掛けたとしても「ADR」なんて出てこられたら、「知らんがな」としか言えないわけです。

それよりも大切なことは、問題を見て、
「これならこのくらい勉強すれば対応できそう」
「これは対応できなさそう」
最初の問題は解ける必要はないですし、次の問題は解けなければならないです。
勉強するときに、このあたりの判断を的確にする必要があります。

換言すれば、どのくらいの深度で勉強すれば合格するのか、という感覚です。
その意味では、行政法や民法あたりから勉強を始めることをオススメします。
この二科目をやれば、「このくらいかな?」という感覚が掴めると思います。
基礎法学は試験1ヶ月前くらいから見ておけばよいでしょう。