行政書士試験の民法科目

民法は、五肢択一が9問で36点になります。 例年は、第26問〜35問までとなっています。
多肢択一はありません。

民法(36点)・憲法(28点)は、行政法(92点)に比べて配点はそれほど多いわけではありませんが、それでもこの三科目で、合計156点になります。
一般知識(56点)と合わせれば、この四科目(計212点)だけで合格点(180点)に到達できます。

また、民法の場合、記述式で2問40点が与えられています。
記述式は簡単ではないのですが、これも大きいところです。
さらに民法は、実務で一番必要な知識になります。
契約トラブルはもちろん、会社法でもベースの部分で必要ですし、また、相続・親族関係の仕事をするなら、必ず必要になってくるところです。

具体的な出題内容

出題内容は条文の基本知識レベルです。
と、こういう言い方をすると、
「じゃ、条文だけ覚えるわ、それで受かるんでしょ?」
と言い出す人が必ずいるのですが、明らかに過去問やったほうが早いです。

民法上の代理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1,代理権は、本人の死亡により消滅する
2,任意代理人は、制限行為能力者でもなることができる
3,代理行為の効果は、代理によってなされた法律行為から生ずる法律的な効果が、直接、本人に帰属することである。
4,代理権のないものが行った行為は、本人が追認すると、最初から代理権があったと同様の効果を生じる
5,復代理人は、代理人の代理人である

(平成5年第27問)

抽象的な条文を覚えて、出題ごとにその場で当てはめるより、最初っから事例を覚えた方が確実です。
また、抽象的な条文を覚えても、見落とすばかりで役に立ちません。
例えば上の例だと、答えは5なのですが、条文では、
「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」(107条1項)
なので、条文だけ見ても……今、見比べてさえ分からないですよ。それよりも「復代理人は本人の代理人」、これは良く問われていることで、条文覚えるよりもそっちを覚えた方がいい、ということです。

Aは、自己所有の土地をBに売却したが、Bは、その旨の登記を行っていない。この場合、判例に照らしBがその所有権の取得を対抗できない第三者は、次のうちどれか。

1,詐欺によってBの登記の申請を妨げた者
2,Bの土地と知りながら不法占拠を開始した者
3,Bの登記がないことのみをもってAから土地の売却を受け、自己名義とした者
4,Aに対し債権を有するが、その土地の差押えを行っていない者
5,何ら実体の権利を有しないのに、登記簿上の名義人となった者

(平成8年第28問)

これもまた条文問題ですが、条文の実務での運用が問われている、といえます。
すなわち問題となっている条文はもちろん177条で、「不動産に関する物件の得喪及び変更は……登記しなければ第三者に対抗することができない」というところです。
ここに第三者とは、「当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者」(明治41年判例)のことで、その具体例が問われているわけです。

と、難しい言い回しをしてみましたが、要するに過去問やってりゃ解けます。

勉強方法

というわけで過去問ですが、例によって早稲田セミナー行政書士試験Success3民法・商法……
といいたいところですが、民法に関しては問題数が足りないです。
手許にある2009年度版で130問しかなく、最新版でも150問はなさそう。
民法の勉強としては、これだと足りないのです。

なので、ここは司法書士の過去問に手を出すのが最善です。あー、予備校の出してるオリジナル問題集って、あんまり出来がよくないです。
司法書士過去問だと、若干難易度が上がりますが、まあしょうがない。
オススメはやはり早稲田セミナー司法書士択一式過去問集民法(上)(下)。
これだと600問近くあります。
これだけやれば十分です。
多いですか?

多いとするなら他の問題集、ということになります。 このあたりは受験日までの日程との関係で考えるしかなかったりします。
1日10問コツコツやれば60日で一周、三回やるとして余裕を見て200日。
それだけの時間があるかどうか。
あるなら司法書士の問題集をお薦めします。が。

教科書は、内田貴の民法1〜4(東京大学出版社)が現在の最善です。
4冊もあり厚手ですが、読みやすく、持っておいて損はない本です。
もっと薄手のものを、ということになると、
国家試験の受験のためのよくわかる民法(神余博史 自由国民社)
でしょうか。が。が。

が。
このあたりの判断は微妙です。
というか、ここの判断が最大のポイント。
確実に点が取れる科目、行政法・憲法(多肢択一除く)・一般知識だけで168点あり、144点くらいまでは、きちんと勉強すれば取れます。
だから、あとどうやって36点取るか?
択一でなるべく点を稼ぎたいわけです。
すると、民法(36点)、商法(20点)、基礎法学(8点)。
このうち商法はかなり難しいわけです。基礎法学もどういう問題が出るか予想が付かない。
そうすると、やっぱり民法で頑張らなきゃ、ということになるわけです。
民法択一はたった36点なんだけど、ここが勝負所になる、そこに踏み込めれば勝ちです。これはもう確実。
逆にそこに踏み込めないと、かなり険しくなってしまいます。

もう一案としては、地方上級の民法本をやることです。
予備校出版のもので、100問〜200問程度のものがいくつかあるようです。
教科書的な解説も載っている本もありました。が。
が。が。が。

勉強を始める前の、最大の考慮ポイントがここです。
要するに200日あるのか?
ないなら、では他の道はあるか? 記述式で取れるのか?
200日あったとしても、民法にどこまで力を入れるのか?
ここはもう自分で判断していくしかない、ということになります。